人生論㊽

2017年08月25日

―武者小路実篤の著書をまとめてみました―

48.人間の肉体が鍛えられるに従って丈夫になる

ように、又発達するように、人間の脳の細胞も

よく働かすことによって、質を緻密にし、又よく

活動するようになる。人間は考える動物で、それ

が人間を今日まで進めてきた、大きな原因の一つ

だから、智慧は馬鹿に出来ないことはわかって

いる。

 僕は人間の本来の生命を健全に生きられるだけ

生かすことが、人間世界に許された、一番幸福な

ことと思う。そして自分の義務を悠々と、立派に

果たして、その余暇を十分に楽しめたら、人生は

愉快なものになるはずと思う。この世は人生を

中心として建設されるべきで金銭をもうけるべき

ところではない。ただ外国と戦って不敗の用意は

必要であるから、その手段は講じる必要があると

思うが、その為に金も必要と思うが、それは金の

為に人間が動くことを意味しない、祖国の為、又

同胞の為に働くことを意味している。そして祖国

の人々の生命が美しく生き出したら、外国の人達

も、我等の国の人々を羨望し、同じように生活出

来るようになることを望むようになり、我に教え

を請うようになるであろう。

 我等は先ず協力して祖国の人々の生活を正しき

基礎の上におきたい。それは正しき労働の上に生

活を築きたい。他人の利己的な仕事を手伝うこと

によって生活せずに、国家の繁栄、国民の生命

完成の仕事の為に先ず働きたい。人間の生命の為

に働きたい。正しき学問、正しき労働、正しき技

術、正しき自己完成は必ず人間の為になるべきで

ある。

 日本を健全な国にすること、つまり日本の国民

が一人でも多く自己を健全にすることが出来るよ

うにすること、それはこの世に於て正しい仕事で

ある。先ず自己の義務を果す。それは立派なこと

である。だから我々は出来るだけ己れの真価を知

り、自分はいかなる方面に進んだらいいかを決め、

その方に出来るだけ熱心に進むべきである。

 「ふまれても、ふまれても
  我はおき上るなり
  青空を見て微笑むなり、
  星は我に光をさずけ給うなり」
 「歩いてゆけなければ
  はってもゆこう
  極楽の道
  すべての人の生きる道
  途中でくたばったら
  叫ぼう
  あとからくる者万歳
  私達に出来なかったことは君達がする。
  君達に出来なかったことは又あの人がする。
  人間は生きぬくのだ。
  貫徹するのだ。
  極楽の道
  すべての人生が生きる道」

 

武者小路実篤(1985.5.12~1976.4.9)

 学習院初等科、中等学科、高等学科を経て、
1906年に東京帝国大学社会学科に入学。1907年、
学習院の時代から同級生であった志賀直哉や木下
利玄らと「一四会」を組織する。同年、東大を
中退。1908年、回覧雑誌「野望」を創刊。1910
年には志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと大学
雑誌『白樺』を創刊。これに因んで白樺派と呼ば
れる。トルストイに傾倒した。また白樺派の思想
的な支柱であった。
 晩年盛んに野菜の絵に「仲良きことは美しき哉」
「君は君 我は我なり されど仲良き」などの文
を添えた色紙を揮毫したことでも有名である。
昭和40年代には日本中の家に色紙があった。


未分類に戻る
このページの先頭へ