人生論⑯

2017年04月20日

―武者小路実篤の著書をまとめてみました―

16.正しい仕事を就て語る前に正しくない仕事に

就て語りたい。

 虚栄心の強いものが他人の虚栄心を悪口し、

怠け者が他人の怠けるのを非難することは日常の

事である。

 どんな場合でも思いやりのないことは、よくない

ことである。だから正しくない職業をしている人に

も同情すべき点をよく知り、軽蔑はしない方が賢い。

しかし正しくない仕事が公然と行われていることは、

その社会がまだ健全でないことを意味しているの

だから、その点を恥じるべきである。

 第二に、自分の性質を下等にする仕事だ。つまり、

元気がなくなったり、自尊心を傷つけたり、嘘を

ついたり、媚びたりしなければならない仕事だ。

他人を怠けものにしたり、真面目な仕事をするのを

馬鹿げた気持ちにさせたり、他人の心を卑屈にさせ

たりする仕事だ。又無意味に他人の時間を占領する

のもいいことではない。つまり他人をいじけた

人間にしたり、下等な人間にしたりする仕事だ。

 一々どういう仕事がわるいとはいわない。正しい

仕事は人々に生きる喜びと勇気を与えるはずだ。

人間はそうつくられている。しかし正しくない仕事

は人間を段々堕落させ、病的にさせ、生きる勇気を

しなびさす。

 

武者小路実篤(1985.5.12~1976.4.9)

 学習院初等科、中等学科、高等学科を経て、
1906年に東京帝国大学社会学科に入学。1907年、
学習院の時代から同級生であった志賀直哉や木下
利玄らと「一四会」を組織する。同年、東大を
中退。1908年、回覧雑誌「野望」を創刊。1910
年には志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと大学
雑誌『白樺』を創刊。これに因んで白樺派と呼ば
れる。トルストイに傾倒した。また白樺派の思想
的な支柱であった。
 晩年盛んに野菜の絵に「仲良きことは美しき哉」
「君は君 我は我なり されど仲良き」などの文
を添えた色紙を揮毫したことでも有名である。
昭和40年代には日本中の家に色紙があった。


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